自作LLMOサイト、日本人1人運営なのに中国からのアクセスが45%になっていた — cn.bing で自然発生的にランクした話
llmoframework.com は私が1人で運営している LLMO (Large Language Model Optimization) の実践サイトです。今日、月次の定点観測をしたら GA4 に妙な数字が並んでいました。28日窓のセッション318のうち、中国からが144 (45%)。日本1人運営の技術サイトに何が起きているのか、掘れる範囲で掘ってみたら想定より深い話になったので記録に残します。
気付いたきっかけ
/llmo-analytics skill を回して定点snapshot を取ったところ、GA4のトップページに見慣れない行が並んでいました。
トップページ:
187 PV /zh/research/geo-paper-summary/
44 PV /
9 PV /es/guide/what-is-llmo/
5 PV /fr/research/papers/
5 PV /guide/quickstart/
/zh/research/geo-paper-summary/ 単ページで 全PV 369の51% を持っていっています。zhは中国語版です。国別で見ると:
sess= 144 pv= 170 China
sess= 57 pv= 55 Singapore
sess= 30 pv= 32 United States
sess= 17 pv= 27 Japan
中国がトップで全体の45%、日本人1人運営の技術サイトなのに日本 (17 sess) の8倍です。しかも Singapore 57 sess のうちかなりの部分も華語圏でしょう。
Direct 157 sess の正体
zhページの sourceを分解すると:
| source | sess | 備考 |
|---|---|---|
| (direct) / (none) | 157 | referrer無しで着地 |
| cn.bing.com / referral | 28 | Microsoft Bing中国版から遷移 |
Direct 157 sess はブラウザのURL打ち込みでもブックマークでもありません。中国国内のBing (cn.bing.com) がクリック時に中間URLを噛ませて document.referrer を落としているパターンです。GA4 の sessionSource は referrer が無いと (direct)/(none) に集約されるので、実際にはcn.bing 経由だがDirect扱いになった sess が 157、その内referrer を保持できたのが 28、というのが実態と推測されます。
中国の主要都市を並べると SERP からの自然拡散に見えます:
Beijing 12 / Chengdu 9 / Guangzhou 8 / Shenzhen 7 / Changsha 5 /
Dongguan 5 / Yanbian 5 / Dalian 4 / Kashgar 4 / Qingdao 4 /
Shanghai 4 / Kunming 3 / Shenyang 3 / Urumqi 3 ...
WeChat や 微博 のバイラル発火なら1都市に偏るはずですが、北京から新疆ウイグル自治区のカシュガルまで散っています。特定コミュニティからではなく、Bing のSERP 経由で細く広く流入しているシグナルです。
cn.bing でSERPを実測してみる
推測だけでは弱いので、PinchTab (ローカルヘッドレスブラウザ) で cn.bing.com を実際に開いて検索順位を測りました。
対象クエリは geo论文 (「GEO論文」中国語)。1位から順に並べると:
[ 1] [2311.09735] GEO: Generative Engine Optimization - arXiv.org
[ 2] GEO: Generative Engine Optimization - arXiv.org
[ 3] 一文看懂GEO|普林斯顿大学最新论文解析 - 知乎
[ 4] GEO 论文:科学研究的发现 | LLMO Framework ← llmoframework
[ 5] GEO:生成式引擎优化 - 论文part - 知乎
[ 6] 《GEO: Generative Engine Optimization》论文详细总结
[ 7] GEO 深度指南:生成式引擎优化——AI 搜索时代的内容可见 ...
[ 8] 普林斯顿大学2024年GEO论文中文翻译版- 大数跨境
[ 9] GEO 论文解读与落地实操
arXiv原論文 → 知乎 (中国最大級のQ&A) → llmoframework が4位。中国最大の技術ナレッジプラットフォームである知乎の直後です。
なお2件目以降のクエリを続けて叩こうとしたら cn.bing がCAPTCHA (「Please solve the challenge below to continue」) を出してきたので、自動測定はここまで。ボット検知が早期に発動する点もこの話に絡んできます。
Bing Webmaster Tools は何を申告していたか
ここが今日の観察で一番驚いたところです。同じページに対して Bing Webmaster Tools 国際版が申告する数字を並べます。
| 指標 | Bing WMT国際版 | GA4実流入 |
|---|---|---|
| clicks / sessions | 2 | 185 |
| impressions | 16 | (推定数千〜数万) |
桁が3つ違います。 clicks 2 のサイトに 185 sess が来るはずがない。cn.bing で実測4位に立っているページの impressions が16のわけがない。
つまり Bing Webmaster Tools国際版は cn.bing.com のクエリを集計していない。Microsoft の Bing 中国版は規制対応のため別法人 (実質的には百度と提携している時期もあった) 経由で運用されており、インデックスも集計もWebmaster Tools国際版とは分離されているようです。
Bing WMT 側にわずかに漏れてくる少数の中国語クエリを見ると、普林斯顿大学geo (4位)、geo 生成式引擎优化 最新实践 案例 方法 (6位) と、拾えている数字自体は同じく上位です。cn.bing側の実インプレッションは、GA4 の185 sess から逆算しておそらく数千〜数万のオーダー。国際SEO 実務で Bing WMT の数字だけを見て「中国からの流入は少ない」と判断すると盲点になります。
なぜzhの1ページが突き刺さったのか
llmoframework の中国語版は既に27ページ全翻訳済み (guide 7 / framework 7 / research 4 / その他) なのですが、cn.bing で拾えているのは実質 geo-paper-summary の1本だけです。他の zh ページはほぼ眠っています。
刺さった仮説を書きます。
Princeton (Aggarwal et al., 2023 arXiv初出 / KDD 2024採録) の GEO 論文は、中国のAI・SEO実務者の間で注目度が高い題材です。しかし中国語圏で検索してみると、原論文の解説は知乎に断片的にあるものの、体系的にまとまった中国語ページが空いていました。llmoframework の /zh/research/geo-paper-summary/ は Princeton 論文の要約解説記事です。念のため誤解のないように書くと、llmoframework は 論文を紹介する二次資料側で、Princeton論文に被引用されているわけではありません。時系列は Princeton論文 (2023-11) → llmoframework 中国語要約 (2025-2026) の順です。
つまり:
- Princeton論文が中国AI界隈で話題化
- 中国語で「geo论文」「普林斯顿大学geo」等で検索する層が発生
- 中国語Wikipediaや百度百科では該当論文の翻訳解説が薄い
- llmoframework zh版が cn.bing の4位に浮上
- 6月中は日次1-8 sess、7月から日次10-20 sess で定着
日次推移を出すとゆっくり右肩上がりで発火しています。一発バズではなく順位が徐々に上がって累積したパターンです。
この観察の何が面白いのか
3つあります。
1つ目: Bing WMT国際版とcn.bingが別インデックスであるという事実自体は Microsoft の公式ドキュメントに詳細記述がなく、国際SEOの日本語資料でもほとんど書かれていません。私は今日ぶつかって気付きました。Bing WMT で impressions が薄いから中国流入が無いという判断は誤りうる。GA4 の country + sessionSource で裏取りする方が現実に近い数字が見えます。
2つ目: LLMO のような「新しい概念」は各国語で情報の空き地が広く、早い者勝ちの構造が残っています。私は中国語ネイティブではないので中国語版はDeepL + 手直しで作った翻訳ですが、それでも cn.bing で 4位に入りました。中国最大のQ&Aである知乎の直後です。中華圏SERPは日本語圏エンジニアが取れる余地があります。
3つ目: cn.bing 側の実測には限界があります。CAPTCHAが早期発動するので同一IP・同一セッションから連続でSERP順位を測ることは難しく、順位トラッキングをスケールさせるには時間・IP・セッションを分散する必要があります。中国SEO業者が高値で順位観測を売っているのはこの制約が理由の一つです。
収益化との距離感
正直に書くと、この中国流入は今のところfunnelには寄与していません。llmoframework の GA4 funnelイベント (outbound_click / cta_quickstart) を確認しても、中国流入元のクリックはほぼゼロです。chatgpt.com refer 3 sess のような AI 引用経由の流入とは別動線で、中国流入は「読んで終わり」の直帰率80.8% で流れ去ります。
なので中国トラフィックそのものを収益化する道はまだ見えていません。ただし副次効果として:
- Google 側の Domain Authority シグナルとして薄く効いている可能性 (直帰は高いが滞在時間が付いている)
- 「LLMOという概念を各国語で普及させる」という私の目的とは合っている
- 記事ネタとして日本語圏で類例が無い (今書いているこの記事)
の3つは正の効果として置いておけます。
これから何をするか
zh版は既に27ページ翻訳済みなので、増強すべきは「新規追加」ではなく「露出格差の是正」です。
- geo-paper-summary から他 zh research (papers, citation-half-life, microsoft-guidelines) への内部リンク強化
- Bing WMT の GetUrlInfo でzh各ページのインデックス状況確認
- cn.bing で他 zh対応クエリ実測 (
llmo 是什么,生成式引擎优化 教程等) /zh/トップページの中華圏読者向けhook調整
順に手を入れて、7月末〜8月中の推移で追加観察を書く予定です。
使ったツール
/llmo-analyticsskill: llmoframework 専用の GA4/GSC/AI引用率3層統合取得/bing-wmtskill: Bing Webmaster Tools API から検索クエリ・ページ・クロール統計取得- PinchTab: ローカルヘッドレスブラウザ、cn.bing SERP 実測 (
http://localhost:9867/navigate+/snapshot) - GA4 Data API: source/medium/country/city/日次推移の詳細ドリル
コード的なノウハウとしては GA4 の sessionSource × pageReferrer × pagePath の3軸クロス集計、cn.bing SERP の accessibility tree からのheading抽出、Bing WMT の GetQueryStats + GetPageStats + GetCrawlStats の合流あたりが実装ポイントです。詳細は本記事の関連記事として追って書きます。
まとめ
- 日本人1人運営のLLMO実践サイトが cn.bing で
geo论文4位にランクし、月次sess の45%が中国からになっていた - Bing WMT国際版はこの流入を集計しない (cn.bing とは別インデックス)。GA4のcountry + sessionSource で裏取り必須
- Princeton GEO 論文の中国語空き地に着地したのが直接的な発火源、6月〜7月にかけてゆっくり右肩上がり
- LLMO のような新しい概念は各国語で情報空き地が広く、翻訳版でも上位を取れる余地がある
- 収益化とは今のところ距離があるが、記事ネタとしては日本語圏に類例なし
次回は zh版の露出格差是正の実装記録と、7月末〜8月中の追加観測を書きます。
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