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熊本M7.1の余震346件を5日間追った — 福岡に届いたのは34件、そして10年前との答え合わせ

今日の22時すぎ、机がすっと横に揺れました。10分後にCLIを引くとこう出ます。

$ quake-lens recent --limit 3
time                      lat       lon   depth   mag  src   place
2026-08-01T13:03:00Z   32.300   130.500     0.0   2.3  p2p   熊本県天草・芦北地方
2026-08-01T12:47:00Z   32.700   130.700    10.0   4.7  p2p   熊本県熊本地方
2026-08-01T12:36:00Z   34.200   139.200    10.0   1.8  p2p   新島・神津島近海

21時47分(JST)のM4.7、福岡は最大震度3。体感は正しかったわけです。

前回の記事で「地震予知はできないが、余震の減衰予測はできる」という話を書いたのが本震の翌日でした。あれから5日。今回はその続報として、7/28に熊本で起きたM7.1の地震の余震系列を毎日計測した結果を記録します。予知の話は一切しません。起きたことを数えて、公式と突き合わせるだけです。

5日間で346件、福岡に届いたのは34件

本震は2026年7月28日16時27分、熊本県熊本地方でM7.1(気象庁マグニチュード)。USGSは「2026 Uto, Japan Earthquake」として登録しています(モーメントマグニチュードでは6.8)。宇土(うと)は熊本市の南隣にある市で、震央がちょうどこの市の直下でした。USGSは大きな地震に最寄りの地名を付けて登録する流儀なので、この記事の比較表でも登録名に合わせて「2026 宇土」と表記します。私の住む福岡県は最大震度5弱でした。

そこから8月1日22時までの余震を、気象庁の地震情報リストから熊本領域(北緯31.5〜33.5、東経129.5〜131.5)で数えると346件。一方、そのうち福岡県内の観測点に震度1以上が記録されたのは、P2P地震情報の観測点データで34件です。

日別余震件数 — 全体と福岡有感の比較

日付余震(全体)うち福岡で有感
7/28 (16
)
10721
7/291287
7/30553
7/31321
8/1 (22時まで)242

面白いのは比率です。熊本で100回揺れても、90km離れた福岡で感じるのは1割。その1割もほぼM3.5以上に限られます。福岡で震度3に達したのは本震(5弱)を除くと3回だけで、本震41分後のM6.1、翌日のM5.8、そして今晩のM4.7でした。「昨日も今日も同じ時間帯に揺れた気がする」という体感の正体は、この減りつつある尻尾の部分だったことになります。

大森・宇津則の答え合わせ

前回の記事では能登半島地震の余震130件で減衰式を検証しました。今回は進行中の系列でやります。346件を大森・宇津則(余震レートが時間のべき乗で減る、という1894年由来の経験則)にフィットさせると:

$ quake-lens omori uto_jma_seq.json --mainshock 2026-07-28T07:27:15Z
K       = 138.2964
c       = 0.3425
p       = 1.2163
n_used  = 346

p=1.22。教科書的な範囲(1.0〜1.4)のど真ん中です。このモデルが「本震から4.2日後のレート」として出す値は約22件/日。実測の8/1は24件でした。誤差1割で当たっています。

このまま減衰が続けば、モデル上は8/4頃に約12件/日、8/11頃に約5件/日まで下がります。ただし前回も書いたとおり、これは「頻度」の予測であって「次の大きいやつ」の予測ではありません。頻度が減っても、今晩のM4.7のような単発は普通に混ざります。減衰カーブは安心材料ですが、油断の根拠にはならない。この区別が全てです。

Gutenberg-Richter則のb値も引いておくと、完全性マグニチュード2.7以上の198件で0.71±0.05。標準の1.0よりやや低く、系列の中で大きめの地震の比率が高いことを示唆します。まだ5日分なので確定的には読めませんが、定点観測の初期値として記録しておきます。

10年前の熊本地震と、同じ条件で比べる

ここからが今回いちばんやりたかったことです。2016年4月の熊本地震。前震M6.5、その28時間後に本震M7.3という連鎖で、九州にいた人には忘れられない地震です。あれと今回は、数字の上でどれくらい違うのか。

比較には条件を揃える必要があります。2016年の細かい余震は気象庁の速報リストでは遡れないので、両方ともUSGSカタログを使い、同じ震源域(上と同じbbox)、本震後同じ経過時間(4.23日)、同じマグニチュード下限(M4.5以上)で切りました。

2016 熊本 (Mw7.0)2026 宇土 (Mw6.8)
M4.5以上の余震37件9件
M5.0以上113
最大余震M5.7M5.6
大森・宇津 p値1.171.22

2016熊本 vs 2026宇土 — 同一条件でのM4.5+余震比較

M4.5以上で数えると、2016年は今回の約4倍です。本震のマグニチュード差(Mw7.0対6.8)以上に開いているのは、2016年が前震・本震の二段構えで、震源域が阿蘇方面まで広がった連鎖型だったため。今回が単発型で済んでいるのは、比較して初めて分かるありがたさでした。

一方でp値を見てください。1.17と1.22。激しさが4倍違う2つの系列が、ほぼ同じ形で減衰しています(2016年はM4.5以上の37件、2026年は気象庁の全余震346件でのフィットなので、そこは割り引いて読んでください)。130年前に大森房吉が余震の減り方として見出した形が、規模の違う地震に同じように現れる。予知はできなくても余震予測が成立するのは、この普遍性があるからです。

まとめと再現手順

  • 熊本M7.1(宇土地震)の余震は5日間で346件。福岡で体感できたのは34件(約1割)で、ほぼM3.5以上に限られる
  • 減衰はp=1.22で大森・宇津則どおり。モデルの予測レートは実測と誤差1割で一致
  • 2016年熊本地震は同一条件でM4.5以上が約4倍。ただし減衰の形(p値)はほぼ同じ

計測は全てquake-lens(Python標準ライブラリのみのCLI、MIT)で再現できます。

git clone https://github.com/kenimo49/quake-lens.git && cd quake-lens
# 直近の余震リスト
python3 -m quake_lens recent --limit 20
# 2016年の系列 (USGS)
python3 -m quake_lens catalog --start 2016-04-15T16:25:07 --end 2016-04-19T22:00:00 \
  --bbox 31.5,129.5,33.5,131.5 --min-mag 4.5 --format json > k2016.json
python3 -m quake_lens omori k2016.json --mainshock 2016-04-15T16:25:06Z

データの出典は気象庁 地震情報P2P地震情報USGSです。

最後に。この記事は福岡から見た統計の記録で、震源に近い熊本では今も余震のたびに眠れない夜が続いているはずです。数字が減っていくカーブが、そのまま平穏に戻るカーブでありますように。

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